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「ロボットにできること あなたにしかできないこと」Q&A延長戦

ロボットにできること あなたにしかできないこと

8/5にIEEE Engineer Spotlightという日本の学生向けウェビナーで、「ロボットにできること あなたにしかできないこと」で講演する機会をいただきました。 ROSに直接関係ありませんが、ROSの話も少しだけしているので、紹介させてください。

https://www.ieee-jp.org/japancouncil/affinitygroup/R10_Spotlight/

近い将来、AIやロボットが人の雇用を脅かすと世間ではささやかれていますが、私はそうは思っていません。コンピュータが人の思考能力の限界を大幅に拡張したのと同じで、ロボットも人の身体能力を大幅に拡張することにつながると考えています。ロボットがあれば、一人で二人分以上働けたり、遠く離れた場所で作業したり、きつい・汚い・危ない仕事だけロボットに任せたりもできるようになる未来が待っていると信じています。弊社 Preferred Networks もそんな未来を実現するために「すべての人にロボットを」というコンセプトを掲げています。

自分の将来を考えたとき、今がこんな状況だからこそ、皆さんは皆さん一人一人にしかできない仕事をしたくはありませんか?今回は、ロボットにはできなくて、あなたにしかできない仕事とは何なのか、私なりの考えを紹介させてください。

おそらく皆さんとは違い、私は小学校も中学校も受験を経験していません。塾にも通ったことがありませんし、高専に進んでからは親のお金にも頼っていません。それでも博士号を取るまでロボット研究を続けることができました。社会人になった今でもずっと公私ともに泥臭くロボット開発に取り組む毎日です。恥ずかしながら、私の人生の転換点やその時の教訓を振り返ることで、皆さんのこれからの人生設計に少しでもお役に立てたら幸いです。

当日は300名の方に聞いていただくことができました。学生の皆さんに、「こんな人生の歩み方もあるのか」と思ってもらえたら良いと考え、自分がこれまで話してこなかったし、これから先も話すことはないような恥ずかしいことも共有するように心がけました。 学生だけでなく社会人の方も半分くらい参加していたようで、僕の半生がいろんな知り合いに知れ渡ってしまったのは、どうしたものかという気持ちもあります笑

ちなみにオンデマンド視聴も行えます。スライドにはない当日のQ&Aの様子などはこちらでご覧いただけます。

https://event.on24.com/eventRegistration/eventRegistrationServlet?eventid=2546605&sessionid=1&key=0F9D4438CAB67E8678C399DB833E852E

Q&A

Q&Aはありがたいことに、講演時間の予定時間である1時間では回答しきれず、1時間45分に延長してもらいましたが、それでも半数くらいの質問には答えられませんでした。 ここでは、せっかいくいただいて時間内に回答できなかったすべての質問に改めて回答をしたいと思います。回答したQ&Aは上記リンク先で動画を視聴してください。

質問の代わりに感想文をお送りいただいた方のものは省略させていただきましたが、嬉しく読ませていただきました。ありがとうございます。

私は今、就職活動におけるインターンシップの申し込み、参加をしています。就職活動を進めていくなかで、興味のある分野を取り扱っている企業、チャレンジしてみたい分野を取り扱っている企業のいずれの会社を選択すべきか苦悩しています。近藤さん、鈴木さんはどのように会社選びを行いましたか?

興味のある分野とチャレンジしてみたい分野が違うという状況を想像しづらいですが、学生さんだと思うので、選ぶことができるならチャレンジしがいがある方を選ぶと良いと思います。学生やインターンは失敗確率の高いことに取り組む方が、その方にとっても会社にとっても良いことです。

ロボットを開発していて一番辛かった瞬間、一番達成感を感じた瞬間を教えてください

ロボットは開発している間が一番楽しいので、むしろ完成して達成感を感じた瞬間の翌日くらいが一番辛いです。

AIを組み合わせないロボットもありますよね?

AIというとバズワードのような印象がありますが、講演でも話したように人間の知的能力の一部を模倣する意味で用いています。 そういう意味では何らかのAIはロボットは持っていないと、単なる機械と変わりないように思います。なので、AIを組み合わせたものをロボットと僕は呼びました。

具体的にどのようなルールを破りましたか?

5年以上前にROS勉強会でカワダロボティクスの協働ロボットを使ったハッカソンを行いました。 普通なら社内資産を社外の人に貸し出すことは設備管理面でも危機管理面でもご法度でしたが、社長やCTOにハッカソンを行うことの利点などを説明して説得し、開催に漕ぎ着けました。 これが縁となってROS勉強会の主宰をすることにも繋がりました。

近藤さんの博士論文はどれくらいニッチでしたか?

人型ロボットを使った対話ロボットシステムの実験を1万人以上の観客に対して行い、数百の被験者データを得た研究は、当時僕のものだけだったように思います。 ニッチではありましたが、その研究成果のおかげで当時採択率30%の国際学会のオーラルセッションに採択されました。

ボストンダイナミクスが販売している4脚歩行ロボットSpotは、今後どんな用途に使われると思いますか?

モビリティの新しい形だと思うので、僕が所有していたら人が行くことが危険な場所(発電所など)の警備や、これまで配達することが困難だった場所(山の頂上など)への配達をまず思い浮かべました。

プログラミング を高3から勉強しようと思っているのですがどの様な

質問が途中で切れていますが、「どの様なことを勉強したら良いですか?」が続くと思って答えます。 僕はかなり計算機寄りの言語から勉強しましたが、今ならJavaScriptが一番敷居が低くて、ウェブサイトを自分ですぐ作れる様になって良いのではないでしょうか。 その後、データ構造とアルゴリズムを勉強すると、深く学べると思います。

いまご紹介いただいたような役割分担を受け持つロボットとは別に、コミュニケーションロボット(エンターテイメントロボット)の市場があると思いますが、市場としてはいまいち拡大できていないように思います。SFにあるような人間とロボットが同居するような世界を実現するにはどうすればいいと思いますか?

今の世の中では、コミュニケーションだけに限定してしまうと、画面とスピーカさえあれば十分だと思われてしまいがちだと思います。つまりスマートフォンで良いと思われてします。 なので、目や声ではできない感覚を使って人と相互作用できないと、大きくは拡大できないのではないでしょうか。

世界一を目指す理由はなんでしょうか?

世界で二番目は、すでに講演でも書いた「小さな小さな領域」ではないからです。すでに自分より先行している競合がいます。そこから追い上げて一番になる行為はとても大変です。

「自分だけの世界でイチバン」というターゲットは,どのように見つけていますか?

自分の好きな分野の最新情報をずっとウォッチし続け、既存の技術や知識が新しい技術や知識に上書きされる瞬間を探すことを意識しています。 既存の技術や知識の上で戦うとライバルに勝つのは、個人戦では厳しいです。

すごく感銘しました。問題解決だったり、新しいアイディアだったり、ひらめきはどんな時にひらめくのですか? ひらめきを得るコツってありますか?

講演中の質問と少し重なりますが、物事を足し算ではなく引き算で考えることを良くします。 足し算の機能を思いつくには新しいことを思いつく必要がありますが、引き算なら今ある機能を取り除くだけです。その制約の中で、この場合はどうする、あの場合はどうする、と考えると、僕はアイデアを思いつくことがあります。

今はどんなお仕事をしていますか?

今は移動型マニピュレータロボットの開発に従事しています。

奥様とは、どういった経緯でどんな感じで出会いましたか?

秘密にしておきます。ただ、仕事やROS勉強会での出会いではありません。

プログラミングの勉強をしているのですが、基本的に独学な故あまり高度なアプリを作れずweb

質問が途中で切れていますが、高度なアプリを作れなくて困っており、どうしたら良いか、という質問として回答します。 勉強をし始めたばかりの段階で高度なものが作れないのは当たり前ではないでしょうか。まずはそれでも毎日継続して勉強することが重要だと思います。そのうち、振り返ってみるといつの間にか高度なものが作れるようになっている自分に驚けるといいですね。

今後,ルンバ(iRobot社)レベルで家庭環境に普及されるようなロボットが誕生するとしたらお二人的には何が考えられますか?(別件ですが,個人的にはルンバが犬の糞尿を処理してくれる機能付いたら最高です.)

これはPFNの将来のプレスリリースを楽しみに待っていてください、とお茶を濁させてください。

私も研究室でROSは大変お世話になっているのですが、今世の中でROSが使われてるものはどの程度普及しているのでしょうか?

ROSにはROS1とROS2があり、ROS1が使われているものには、一部の協働ロボットとエンターテイメントロボットなどがあると思います。ROS2は安全性や安定性などの項目で大幅に改善が進んでいる新しいROSのバージョンです。こちらは世界中のロボットの基盤システムとして採用が進む可能性があります。

技術書を書いていくべきだと思いますか?

書きたいものがあるなら、書くべきだと思います。売れる売れないは周りが決める問題です。

pfnのパーソナルは何年ごろの普及を目指しているのでしょうか?

僕は会社の代表ではないため、答えられません。

ROSの利用にはURDFで様々なパラメータを指定する必要があると思われます。企業がROS用のモデルを提供している場合は必要ないと思われるのですが、そうでない場合システム同定は気にする必要はありますでしょうか。また、気にする必要がある場合はシステム同定に対応したROSパッケージはありますでしょうか。

ROSはアプリケーション寄りの上位層のソフトウェアを開発することが主目的だと思います。ハードウェア一体一体に依存したような下位層のソフトウェアは一部にはありますが、基本的には開発者が個別に対応する必要があります。

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