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学位論文を書くにあたって

博士課程に上がってから、自分の勉強がてら、修士学生の修士論文ドラフトにコメントを入れるようになったのですが、今年は僕も自分の博士論文や公聴会関係で手一杯なため、あまりその時間を取れそうにありません。

そこで、今回はこのブログに、僕自身が学会原稿や学位論文を書いて先生方にコメントしていただいたときと、博士1年、2年で僕がコメントしたときに気づいた共通の注意項目を残しておこうと思います。ここでは、日本語の学位論文を対象としています。博士論文以外で英語で書かれる方は相対的に見て圧倒的に少ないでしょうし。

もし、読者の方で以下の項目以外にも追加項目が思いつけば、コメントいただけると幸いです。誤字脱字の修正はもちろん当たり前として、ここには載せませんでした。誤字脱字は自分だけでは気づかない部分もあるので、学生同士で回し読みしてみることをおすすめします。

カタカナ英語の乱用

学生は、なまじ英語をかじっているせいか、「〜をスピードアップさせる」「シンプルな〜」といったカタカナ英語を乱用する傾向にあります。 日本語で代替する言葉が使われているなら、そちらを使うべきです(「〜を高速化する」「簡潔な〜」など)。 よくやってしまいがちな悲しい例として「アプリケーションへの応用」などもありました。間違っている理由はわかりますよね?

散文、1行改行の多用

各章の見出し文などで散見しますが、1行で文章が終わり、改行して次の文章へ移るのは見た目も悪いし、読者が読みやすくありません。 次の文章との繋がりを改善し、まとまった文章を書くようにすべきです。

接続語の多用

上の項目との兼ね合いが難しいですが、文章同士を繋げる際に「しかし」「このため」「つまり」などの接続語の多用する傾向にあります。 カーネギーメロン大学の金出先生が、本学での講演でこう言っていました。「キング牧師がもし “Because, I have a dream.” と言っていたら、民衆を動かせなかったかもしれない。」接続語は文章の持つ意味を弱めてしまいます。文章を工夫して、あまり使わなくても良い文章にしましょう。

表記揺れ

例えば、おこなうには「行う」「行なう」「おこなう」という3つの書き方が存在します。 僕は「行う」が表記として一番正しいと思いますが、最低限、論文中では1つの表記のみを使用するよう心がけましょう。

漢数字、アラビア数字の使い分け

論文中で、「一つ目の〜」「二次元の〜」「3種類の〜」など数字を使った表現で、漢数字とアラビア数字の使い分けをしなくてはなりません。 単位とともに使う際にはアラビア数字、単語として体をなす際には漢数字を使うのが正しいようです。 例外もあって、例えば「次元」は単位ではなく、単語として扱われるようです。ここは難しいところです。

行う大好き症候群

「〜を確認することを行なった」「〜の確認を行う」といった「〜を行う、行なった」冗長表現が何故かみんな大好きです。 でも「〜を確認した」で十分では?

タイトル再考+略字禁止

タイトルだけを読んで、その論文の中身がある程度わかるようにすべきです。 「評価実験」と短くするのも結構ですが、何の評価なのかがわかると、読者は読みやすいでしょう。 章構成を最初に「はじめに」としたなら最後は「おわりに」ですし、「緒言」なら「結言」であるべきです。 さらに、タイトル中では略字を使うことはできません。「BoFによる〜」ではなく、きちんと「Bag-of-featuresによる〜」と展開しなくてはなりません。

図の配置、配色

論文中の図の挿入場所は参照する文章の出来るだけ近くに配置されるべきです。 ページ数を気にしなくても良い学位論文の場合、図の大きさは図中の文字が十分に読み取れる大きさになるよう、大きくすべきです。 また、白黒印刷されたときでも、その図の意図が読み取れるように、特にグラフの配色には気を使いましょう。

英語は英語で、共通の注意項目があることを、国際学会や英文ジャーナルの執筆で感じているので、それもまた別の機会に書き記していこうと思います。

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